2022年07月05日
2022年夏、山種美術館では水をテーマとした涼やかな展覧会を開催いたします。
四方を海に囲まれ、湿潤な気候で降水量の多い日本では、水は身近な存在であり、古来、名所絵や山水画、物語絵など、さまざまな主題の中で描かれてきました。近代以降の日本画においても、海や湖、川や滝を題材とした風景画から、水辺の場面を描く歴史画まで、水が主要なモティーフとなった作品は時代やジャンルを問わず幅広く見いだせます。
本展では、海辺を舞台とし江戸時代に描かれた《源平合戦図》から、《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》など雨を描いた名作で知られる歌川広重(1797-1858)の名所絵、高価な岩絵具・群青をふんだんに使って海を表現する川端龍子(1885-1966)の《黒潮》、画家の代名詞にもなっている千住博(1958- )の「滝」シリーズまで、水を印象的に描きだした優品の数々を展示いたします。
暑さ厳しき折、涼感にあふれた美術館の展示室で、日本の画家たちが描き出すさまざまな水のかたちをお楽しみいただき、涼しさとともに、水の恵みと自然の豊かさを感じていただければ幸いです。
[特集展示]日本画に描かれた源平の世界
昨今、大河ドラマやアニメで注目を集めている源平の物語は、日本画でもたびたび取り上げられ、小林古径(1883-1957)や前田青邨(1885-1977)をはじめ、歴史画を得意とする画家たちを中心に描き継がれてきました。
そのなかでは、宇治川や瀬戸内海など、水辺を舞台とした場面が数多く絵画化されています。これらの作品を「水のかたち」展で取り上げるとともに、源義経と藤原秀衡を描く安田靫彦(1884-1978)《平泉の義経》、平清盛の娘・徳子(建礼門院)を描く今村紫紅(1880-1916)《大原の奥》など、源平のヒーロー、ヒロインを題材とした作品をあわせて展示いたします。