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2019年12月23日
生涯にわたり美人画を描き続けた日本画家・上村松園(1875-1949)。このたび、山種美術館が広尾に移転し開館してから10周年を迎えたことを記念して、当館が所蔵する松園の作品を一挙公開する特別展を開催いたします。当館創立者で初代館長の山﨑種二(1893-1983)は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集しました。《蛍》、《砧》、《牡丹雪》などの代表作を含む当館所蔵の作品計18点は、屈指の松園コレクションとして知られます。
京都で生まれ育った松園は、京都府画学校に通い鈴木松年に学んだのち、幸野楳嶺、竹内栖鳳に師事し、技法の習得に励みました。早くから頭角を現し、江戸や明治の風俗、和漢の古典に取材した女性像を描いて、文展や帝展など数々の展覧会に出品を重ねて活躍します。美人画の名手として高く評価され、1948(昭和23)年には女性として初めて文化勲章を受章しました。「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語った松園が描き続けた気品ある美人画は、今なお多くの人々に愛されています。
本展では、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方や、その弟子の伊東深水の美人画、さらに村上華岳、小倉遊亀、橋本明治などの日本画家による、多彩な女性像をご紹介します。松園の美人画とともに、近代・現代のさまざまな画家たちが女性の姿を描き出した作品をご覧いただきながら、日本画における美人画の世界の豊かな広がりや、その表現の展開をお楽しみいただければ幸いです。
2019年12月16日
ネットショップでお申込みいただいた商品のお届けは、年内は12月27日まで、年始は1月7日から順次お届けになります。お届け日指定の場合、ご注意くださいませ。
2019年11月02日
東山魁夷(ひがしやまかいい)の青、奥田元宋(おくだげんそう)の赤―。ある特定の色が画家の名と結び付けられ、代名詞のように語られることがあります。絵画の中の色は、作品のイメージや画家本人の世界観を伝えるうえで、重要な役割を担っているといえるでしょう。このたび山種美術館では、近代・現代の日本画から印象的に色が表された作品を取り上げ、画家と色の密接な関わりをひもとく展覧会を開催いたします。
明治時代に入り、日本は様々な分野で西洋の影響を受けましたが、絵画の色も例外ではありませんでした。元来、日本美術の伝統的な絵具は、群青は藍銅鉱(らんどうこう)、白は胡粉などに見られるように、鉱石や貝殻をはじめとする天然素材が主に用いられてきました。そのため、表現できる色数も限られていましたが、近代以降、多彩な合成顔料の流入や、新たな人造の岩絵具が開発されたことなどにより、色の種類が増加していきます。
このような画材の広がりは、日本画家に刺激と表現の多様化をもたらしました。画家たちの間では新たに開発・輸入された合成絵具や西洋の色彩学などを取り入れて制作を試みる者がいる一方で、天然岩絵具を中心とした伝統的な彩色表現が日本画の神髄とみなす者もおり、それぞれが日本画ならではの色の可能性を追求しながら、バリエーション豊かな作品を生み出しています。
本展では、《年暮る》で雪降る京都を青色で静謐に表した魁夷、《奥入瀬(秋)》で紅葉した奥入瀬渓流を赤色で鮮麗に描いた元宋をはじめ、竹内栖鳳(たけうちせいほう)、奥村土牛(おくむらとぎゅう)など色を効果的に取り入れた日本画家の作品を約50点展示します。画家が自らの芸術を創造するため、どのような色を制作に活かしたのか、それぞれの言葉や、社会的背景などを踏まえながら、色を通じて見えてくる画家たちの軌跡をご紹介いたします。
※作品はいずれも山種美術館蔵
2019年10月01日
2020年 山種美術館カレンダー販売開始しました
トップページ、おすすめ商品よりご購入いただけます。
2019年08月31日
このたび山種美術館では広尾開館10周年を記念して、近代日本画を代表する4人の画家、横山大観(よこやまたいかん)(1868-1958)・菱田春草(ひしだしゅんそう)(1874-1911)・川合玉堂(かわいぎょくどう)(1873-1957)・川端龍子(かわばたりゅうし)(1885-1966)の作品を一堂に展示し、ご覧いただく展覧会を開催します。

大観・春草・玉堂・龍子はいずれも、伝統をふまえながら新しい時代に即した絵画を模索し、日本画の発展を導きました。一方で、彼らの主な活動の場は異なっています。大観と春草は日本美術院において、さまざまな技法や表現を試み、革新的な日本画を生み出しました。玉堂は官展を中心に活躍し、日本画における風景表現に新境地を拓いています。また、龍子は、再興日本美術院を脱退して自ら主宰する青龍社を創立、大画面の迫力ある作品を発表して画壇にインパクトを与えました。これら4人の画家に焦点をあて、彼らの画業をたどりながら、近代日本画の歩みを振り返ります。

さらに、晩年の大観・玉堂・龍子の3人による松竹梅展(1955-1957年、画廊・兼素洞で開催)にも注目します。松竹梅展は当館創立者・山﨑種二の希望により企画された展覧会です。種二は彼らと交流を重ねながら作品を蒐集していました。

本展では、当館所蔵の松竹梅展の作品を全点展示するとともに、南画とやまと絵を融合させた大観《作右衛門の家》、光や空気の描出に挑んだ「朦朧体(もうろうたい)」の代表作である春草《釣帰(ちょうき)》、田園の情景を生き生きと表した玉堂の《早乙女》、第1回青龍展に出品された記念碑的な龍子《鳴門》など、山種コレクションから各画家の珠玉の作品をご紹介します。近代日本画のパイオニアとして画壇を牽引した、大観・春草・玉堂・龍子の競演をお楽しみください。
2019年08月10日
山種美術館では、日本画の奨励・普及活動の一環として、1971(昭和46)年に「山種美術館賞」を創設し、1997(平成9)年までの隔年14回にわたり、「山種美術館賞展 今日の日本画」を実施しました。2016(平成28)年には、当館の開館50周年を記念し、かつての「山種美術館賞」の趣旨を継承しつつ、装いを新たにした公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード」をスタートさせました。本アワードは、日本画の新たな創造に努める優秀な画家の発掘と奨励を目指すもので、この取り組みを通じて、新しい時代に向けた日本画家の育成と日本画の発展に貢献することができればと願っています。

第2回目(「山種美術館賞」から数えて通算16回目)となる今回のアワードでは、7人の審査員による厳正な審査の結果、全189点の応募作品の中から、大賞・安原成美《雨後のほほ》、優秀賞・青木秀明《鴯鶓(エミュー)ノ図 -飛べない鳥-》、特別賞(セイコー賞)・近藤守《nostalgie》、および奨励賞として、江川直也《雪野に佇む》、北川安希子《新天地》、外山諒《Loka-dhaatu》、永岡郁美《青想夜夢》、森萌衣《団欒》の5作品の受賞が決定しました。

本展では、これらの受賞作品をはじめとする入選作品全44点を一堂に公開します。今後の活躍が期待される若手画家たちの作品を通して、日本画の新たな息吹と確かな未来を感じ取っていただければ幸いです。

なお、本展会期中には、当館コレクションの中から、重要文化財を含む江戸絵画の優品を厳選して展示し、近代・現代日本画の礎となった古典絵画の世界もご紹介します。若手画家の入選作品とあわせて是非ご覧ください。
2019年08月08日
お盆期間中、8月10日~18日は配送業務を停止しております
期間中にご注文頂きました商品は、19日より随時発送いたします
2019年06月26日
いつも山種美術館ミュージアムショップをご利用いただき、誠にありがとうございます。
G20大阪サミットの開催により、2019年6月28日(金)、29日(土)の前後、一部地域でお荷物のお届けに遅延が生じる可能性がございます。
お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。
2019年06月08日
本年は、日本画家・速水御舟(1894-1935)の生誕から125年、そして山種美術館が現在の渋谷区広尾の地に移転し開館してから10年目にあたります。この節目の年を記念し、当館の「顔」となっている御舟コレクションの全貌を紹介する展覧会を開催いたします。

当館創立者の山崎種二(1893-1983)は御舟とは一つ違いでしたが、御舟が40歳という若さで早世したため、直接交流することがかないませんでした。しかし、御舟の芸術を心から愛した種二は、機会あるごとにその作品を蒐集し、自宅の床の間にかけて楽しんでいました。

一方、御舟は23歳の若さで日本美術院同人に推挙され、横山大観や小林古径らにも高く評価された画家。「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」という御舟の言葉どおり、彼は生涯を通じて、短いサイクルで次々と作風を変えながら、画壇に新風を吹き込んでいきました。

御舟は40年という短い生涯に、およそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」とも称されていました。1976年、旧安宅産業コレクションの御舟作品105点の一括購入の相談が種二のもとに持ち込まれ、種二は購入の決断をします。その結果、すでに所蔵していた作品とあわせて計120点の御舟作品が山種美術館の所蔵となり、以来当館は「御舟美術館」として親しまれてきました。

本展では、御舟の代表作ともいえる《炎舞》、《名樹散椿》◆(ともに重要文化財)をはじめとして、《錦木》など初期の作品から《牡丹花(墨牡丹)》など晩年の作品まで、各時代の作品をまとめてご覧いただきます。

当館の御舟コレクション全点公開は2009年の広尾開館以来10年ぶりとなります。この機会に、御舟芸術の真髄をお楽しみください。

※作品はいずれも山種美術館蔵 ◆前期展示(6/8-7/7)
2019年04月22日
ゴールデンウイーク期間中、4月25日~5月6日は配送業務を停止しております。
期間中にご注文頂きました商品は、5月7日より随時発送いたします。
2019年04月06日
美しく咲き誇る花々は、古くから日本人の心を魅了してきました。春夏秋冬で多彩な表情をみせる花は、詩歌や文学と結びつきながら季節を象徴するモティーフとして愛好され、絵画においても描き継がれています。山種美術館では、春爛漫のこの時期に、四季の花をテーマとした展覧会を開催します。梅、桜、牡丹、百合、朝顔、菊、水仙、椿など、各季節の代表的な花々が描かれた、江戸時代から現代までの作品をご覧いただきます。

花の画題には、鳥や虫、人物との組み合わせなど、多彩なバリエーションがあり、季節の情趣を感じさせながら私たちの目を楽しませてくれます。江戸時代の琳派の絵師・酒井抱一は、月夜の梅を描いた《月梅図》、菊に瑠璃鶲を配した《菊小禽図》など、風雅な花の姿を描き出しました。近代以降にも、桜を愛でる女性像を描いた上村松園《桜可里》、初夏の泰山木と瑠璃鳥を取り合わせた小林古径《白華小禽》、雨上がりの紫陽花を描いた山口蓬春《梅雨晴》といったように、季節特有の自然美を捉えた花の絵の優品が数多く生み出されています。

本展では、描かれた花々を春夏秋冬の順に展示し、移り変わる季節を会場内でお楽しみいただきます。また、花言葉や花の特徴、作品や花への想いを語った画家の言葉などを交え、花の絵画の魅力をさまざまな視点からご紹介します。描かれた花により満開となった美術館で、百花繚乱の世界をご堪能ください。
2019年02月02日
1966(昭和41)年、東京・日本橋兜町に開館した山種美術館は、2009(平成21)年10月、渋谷区広尾に移転して新美術館をオープンしました。2019年、広尾開館10周年を記念する特別展第一弾として、当館と縁が深く、同年に生誕130年を迎える日本画家・奥村土牛(おくむらとぎゅう)(1889-1990)に焦点をあてた展覧会を開催します。当館の創立者・山﨑種二は、「絵は人柄である」という信念のもと、画家と直接関わり合うなかで作品を蒐集しました。特に土牛とは親しく、まだ無名だった研鑽時期の支援から約半世紀にわたり交流を続けた結果、現在、当館は135点に及ぶ屈指の土牛コレクションで知られています。

土牛は、画家志望であった父親のもとで10代から絵画に親しみ、梶田半古(かじたはんこ)(1870-1917)の画塾で生涯の師と仰ぐ 小林古径(こばやしこけい)(1883-1957)に出会います。38歳で院展初入選と遅咲きでありながら、展覧会に出品を重ねて40代半ばから名声を高め、101歳におよぶ生涯において、晩年まで制作に取り組みました。土牛は、半古や古径から学んだ写生や画品を重視する姿勢を生涯貫き、「絵を通して伝わってくるのは作者の人間性」という自らの言葉を体現するような作品を数多く生み出しました。

本展では、瀬戸内海の鳴門の渦潮を描いた《鳴門》や、古径を偲んで制作した《浄心》《醍醐》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展の出品作を中心に約60点を展示し、土牛の画業をたどります。

土牛という雅号は、中国・唐の詩句「土牛石田を耕す」に由来します。その名を糧に、地道に画業へ専心した土牛。80歳を過ぎてなお「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語り、精進を重ね、100歳を超えても絵筆をとり続けました。山種美術館が広尾開館10周年を迎え、当館と縁の深い奥村土牛が生誕130年となるこの機会に、清らかで温かみ溢れる土牛芸術をご堪能ください。
2018年11月16日
当館創立者の山﨑種二(やまざきたねじ)は、1968(昭和43)年に完成された皇居宮殿を飾った美術品に感銘を受け、より多くの人々にこの優れた作品をご覧いただきたいという願いから、山口蓬春(やまぐちほうしゅん)、上村松篁(うえむらしょうこう)、橋本明治(はしもとめいじ)、東山魁夷(ひがしやまかいい)ら宮殿装飾を手掛けた日本画家たちに同趣向の作品制作を依頼しました。

このたび、山種美術館では、これら当館所蔵の皇居宮殿にちなんだ作品を4年ぶりに一挙公開するとともに、皇室ゆかりの美術をご紹介する展覧会を開催いたします。

加えて、天皇の手になる書・宸翰(しんかん)や宮家に伝来した絵巻、皇族から下賜された美術工芸品、野口小蘋(のぐちしょうひん)、下村観山(しもむらかんざん)、西村五雲(にしむらごうん)らによる宮家旧蔵の日本画など、皇室とゆかりの深い作品をご覧いただきます。

さらに、1890(明治23)年に皇室による美術の保護奨励の目的で設置された帝室技芸員制度にも注目します。橋本雅邦(はしもとがほう)、竹内栖鳳(たけうちせいほう)、上村松園(うえむらしょうえん)らの日本画から、川之邊一朝(かわのべいっちょう)、並河靖之(なみかわやすゆき)、濤川惣助(なみかわそうすけ)、香川勝廣(かつがわかつひろ)らの工芸作品、そして黒田清輝(くろだせいき)や和田英作(わだえいさく)らの洋画まで、帝室技芸員に任命された作家たちの優品を通して、近代の美術家たちが皇室とどのように関わってきたかを振り返ります。
2018年09月15日
2019年 山種美術館カレンダー販売開始しました
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2018年09月14日
近代以降の日本画壇において、常に先導的な役割を担ってきた日本美術院。今年、創立120年を迎えることを記念して、山種美術館では、日本美術院において、特にめざましい活躍をみせた横山大観、菱田春草、小林古径、速水御舟を中心に、画家たちの活動の軌跡をたどる展覧会を開催します。

明治時代に入り、新時代にふさわしい日本画を画家たちは探求していました。その状況下、東京美術学校(現・東京藝術大学)を辞職した岡倉天心は、自らに従った大観をはじめとする若手画家らとともに、1898(明治31)年、日本美術院を創立します。一時、茨城県五浦での苦難の時期を経たものの、1914(大正3)年に、大観たちによって再興されました。その後も、古典に学びつつ日本画の新生面を切り拓こうと挑む多くの画家たちが、日本美術院を舞台に活躍しています。

なかでも注目されるのが、日本美術院の創立に参加した大観と春草、および彼らに続く世代の旗手として活躍した古径と御舟です。大観は再興後も日本美術院の中心的な存在であり続け、春草は16年の短い画業の間に数々の秀作を生み出しました。また、古径は無駄のない線描と清澄な色彩で格調高い画風を確立し、古径より一回り若い御舟は、次々と新たな日本画の創造に挑み続けました。

本展では、これら4名を中心に、日本美術院の草創期に活躍した画家から、現代の日本画壇を代表するにいたる同院の画家の優品をご紹介します。また、院展出品時から高評価を受けた古径の代表作《清姫》全8点を一堂に展示するとともに、昭和期に制作された作品で初めて重要文化財に指定された御舟《名樹散椿》(10月16日-11月11日公開)を特別展示します。

山種コレクションにおける日本美術院の画家たちの作品を通し、新たな日本画の開拓に挑んだ画家たちの軌跡をご覧ください。
2018年08月06日
お盆期間中、8月10日~16日は配送業務を停止しております
期間中にご注文頂きました商品は、17日より随時発送いたします
2018年07月12日
2018年9月、世界各国の水の専門家が参加する「国際水協会(IWA)世界会議」が東京で行われます。水をテーマにした国際会議が催され、世界の水環境への関心がますます高まる今夏、山種美術館では、日本美術に表された水に注目し、水を描いた絵画を一堂にご覧いただく展覧会を開催します。

豊かな水源に恵まれた日本では、水は常に人々の生活とともにあり、美術作品においてもさまざまに表現されてきました。雨が池や湖をつくり、川となり海へ注ぐように、水は刻々と姿を変化させます。また、躍動する波や、光を反射する水面など、水が見せる表情は多くの画家の創作意欲をかきたてたのでしょう。水を描いた絵画には、画家たちの優れた技巧や多彩な表現をみることができます。

本展では、当館が所蔵する江戸時代の浮世絵から近代・現代の日本画まで、水が描かれた作品を厳選し、ご紹介いたします。奥入瀬渓流に取材した奥田元宋(おくだげんそう)《奥入瀬(秋)》、鳴門海峡の渦潮を描いた川端龍子(かわばたりゅうし)《鳴門》や奥村土牛(おくむらとぎゅう)《鳴門》は、川や海の流動する姿を生き生きと捉えています。また、土牛《那智》や千住博(せんじゅひろし)《ウォーターフォール》においては、勢いよく流れ落ちる滝が迫力ある大画面に描かれ、水の持つ神聖さも感じさせます。一方で、激しい夕立のなか、橋を行き交う人々を描いた歌川広重(うたがわひろしげ)(初代)《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》[後期展示]や、雨に煙る山路を表した川合玉堂(かわいぎょくどう)《渓雨紅樹(けいうこうじゅ)》は、情趣豊かに雨の風景を描き出しています。

これらの作品を通して、水の表現の幅広さとともに、画家たちが水に向けてきたまなざしや思いを感じていただければ幸いです。暑い夏の季節に、涼やかな水の絵画をお楽しみください。
2018年05月08日
2018(平成30)年は、江戸へ琳派を根付かせた酒井抱一(さかい ほういつ・1761-1828)の没後190年、およびその弟子である鈴木其一(すずき きいつ・1796-1858)の没後160年にあたります。当館ではこれを記念し、俵屋宗達(たわらや そうたつ)・尾形光琳(おがた こうりん)・抱一を中心に花開き、近代・現代の日本画家やデザイナーに受け継がれた琳派の伝統をたどる特別展を開催いたします。

17世紀、京都で活躍した俵屋宗達は、やまと絵の様式を基盤としながら、デフォルメやトリミングといった斬新なアレンジにより、装飾性と意匠性に富んだ独自のスタイルを確立しました。また、宗達が下絵を描き、本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)が書を記した一連の作品では、平安時代の料紙装飾をモデルとしながら、書と絵が見事に響き合っており、グラフィックデザインに通じる感性をみてとることができます。こうしたデザイン性豊かな造形は、18世紀の光琳に継承され、19世紀に入ると、大名家出身の抱一がさらなる洗練を加え、いわゆる江戸琳派の様式を確立しました。本展では、当館が所蔵する琳派コレクションを中心に、宗達(絵)・光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》(山種美術館)、光琳《白楽天図》(個人蔵)、抱一《秋草鶉図》【重要美術品】(山種美術館)、其一《四季花鳥図》(山種美術館)をはじめとする琳派の画家の優品を一堂に展示します。特に、近年、修復を行った当館所蔵の伝 宗達《槙楓図》(山種美術館)は、本展が修復後初のお披露目となります。

また、本展では、近代・現代における琳派の継承のあり方にも注目します。日本画では、菱田春草(ひしだ しゅんそう)や速水御舟(はやみ ぎょしゅう)、福田平八郎(ふくだ へいはちろう)、加山又造(かやま またぞう)など、琳派に影響を受けた名だたる画家たちの作品を通じて、装飾性や平面性など、琳派の造形をいかにとらえ、自己の画風に取り入れていったのか、その過程を見つめます。さらに、「琳派は〈日本のかたち〉の原型だ」と述べ、琳派のエッセンスを随所に散りばめた作品を数多く発表したグラフィックデザイナー・田中一光(たなか いっこう)のポスターもあわせて展示し、17世紀の宗達・光悦に始まり、20世紀の田中一光へと受け継がれた琳派の造形の魅力に迫ります。
2018年04月25日
ゴールデンウィーク期間中、4月28日~5月6日は配送業務を停止しております
期間中にご注文頂きました商品は、7日より随時発送いたします
2018年02月28日
日本の春を象徴する桜。このたび、山種コレクションの中から、桜が描かれた作品を厳選し、一堂に公開する展覧会を6年ぶりに開催いたします。

爛漫と咲き誇り、やがて散りゆく桜の美しさは、古くから詩歌に詠まれ、調度や衣装などの文様に表されるとともに、絵画にも盛んに描かれてきました。桜を愛でる人々を描いた物語絵や風俗画から、奈良の吉野など、桜の名所を舞台とした名所絵や風景画、そして花が主役となる花鳥画や花卉画(かきが)まで、さまざまなジャンルで絵画化され、時代とともに多彩な表現が展開しています。

近代・現代の日本画においても、桜は重要な題材であり続けました。歴史や物語の一場面で桜を印象的に表した橋本雅邦(はしもとがほう)の《児島高徳》(こじまたかのり)や小林古径(こばやしこけい)の《清姫》(きよひめ)「入相桜」(いりあいざくら)、江戸時代の風俗画に範をとった上村松園(うえむらしょうえん)の《桜可里》(さくらがり)では、過去の時代をテーマとする中で桜が効果的に用いられています。また、京都の桜を描いた奥村土牛(おくむらとぎゅう)の《醍醐》や東山魁夷(ひがしやまかいい)の《春静》(はるしずか)には、桜の咲く光景が描写されるだけでなく、桜に対する画家それぞれの思いまでもが映し出されています。さらに、夜桜をクローズアップして幻想的に描き出した速水御舟(はやみぎょしゅう)《夜桜》(よざくら)をはじめ、桜そのものを主題とした作品では、画家の個性や美意識が反映され、日本画の表現の幅広さをみてとることができます。

2018年春、山種美術館は名だたる日本画家たちによる桜の絵画で満開となります。会場でお花見を楽しみながら、季節を満喫していただければ幸いです。